私立大学教育研究活性化設備整備事業とラーニングコモンズとアクティブラーニング

2012年7月中旬に「平成24年度に私立大学教育研究活性化設備整備事業」という補助金の募集が行われ、180件の採択結果が文部科学省のHPで公開されています。当時ふぁぼはして把握はしていたものの、その後みごとにスルーしておりました。というかそもそもこの補助金が直接関係するものとはいまいちピンときておらず・・。

 

そしてこの補助金の存在を再認識させられたのが、4月中旬の追手門学院大学図書館のこちらの記事。

 図書館内(2階・カウンター奥)に「ラーニング・コモンズ」を設置しました。この事業は、文部科学省平成24年度「私立大学教育研究活性化設備整備事業」に採択されたものです。

 

ん?補助金でラーコモ?ということで文科省のサイトで採択一覧を見てみると、なんとラーニングコモンズとアクティブラーニングの多いこと多いこと。なお資料を見てもらうとわかりますが、「私立大学教育研究活性化設備整備事業委員会」委員には、溝上智恵子先生(筑波大学図書館情報メディア研究科長)が入っておられます。

 

ちなみに、この補助金の事業目的は次の通り。

本事業は、私立大学が建学の精神と特色を生かした人材育成機能を発揮 し、及び大学間連携を進め、もって社会の期待に十分に応える教育研究を強化し、進展させ、私立大学等の教育改革のこれまで以上の新たな展開を図るため、基 盤となる教育研究設備を整備することを目的としています。

 

また申請は次のA~Eの区分となっています。

A 主体的な学びへの転換を図り、学生の学修効果を最大限発揮するための効果的な教育を行うための環境を整備する取組
B グローバルな教育環境の下で学生が多様な交流や切磋琢磨する機会が得られる環境を整備する取組
C 地域再生の拠点や社会・経済・文化発展の核となる大学として、多様な主体との連携協力関係の下、質の高い教育や社会人受入れ等を進めるための環境を整備する取組
D 高度な研究設備環境を整備し、当該設備を用いた質の高い教育活動を展開する取組
E A~Dのうち、複数大学の連携により設備を整備し、共同利用や教育上の連携等を行うことで、質保証と教育内容の多様化を図る取組

 

A区分がいわゆる、ラーニングコモンズの環境整備だったりアクティブラーニングに関する取り組みだったりするのですが、ふたを開けてみると採択結果180件中119件、約65%もがA区分という結果だったわけです。

 

取組名称だけだと内容がいまいちわからないのですが、全体の中からラーニングコモンズとアクティブラーニングに関係すると思われる取り組みをピックアップしてみました。あくまで自己判断ですので、詳細は上述した採択一覧でご確認ください。(大学HPなどで関連するページを見つけたものは取り組み名称からリンクしています)

 

区分 大学名 取組名称
北海道情報大学 主体的な学びへ導くためのICT環境構築モデルの開発
千歳科学技術大学 学生の主体的な学びを促進する学修支援システムの構築
青森中央短期大学 アクティブラーニング教室整備事業
尚絅学院大学 主体的学びの促進とその成果の共有を目指すラーニングシステム
茨城キリスト教大学 大学の教育力向上と学生の主体的な学びの有機的結合事業
和洋女子大学 学士力向上のための能動的学習環境の整備
植草学園大学 主体的な学びを支える学修記録システム
北里大学 Team Based Learningによる能動的学習の促進
國学院大学 発信する学習空間の創設―学生が表現する建学の精神―
国際基督教大学 自発的学修者としての学生を支援する多機能ライティングセンター
上智大学 上智大学インターナショナルラウンジ(仮称)整備計画
創価大学 グループワークの可視化による気づきの促しと授業外学習の質保証
創価大学 協同学習空間の創出と学習支援機能の充実
創価女子短期大学 iPadと連動したアクティブ・コミュニケーション環境の整備
中央大学 学習コンテンツの多様な共創環境による主体的な学びの支援
武蔵大学 アクティブラーニング型ゼミナール運営のための教室環境の整備
武蔵野大学 有明・都市環境地域社会の課題を主題にしたアクティブラーニング
立教大学 立教ファーストタームプログラム展開のための教育設備整備
東京工科大学 学部横断アクティブラーニングセンター構築プロジェクト
多摩大学 多摩大学ラーニングコモンズ
文京学院大学 グローバル人材育成のためのアクティブラーニングスタジオ構築
十文字学園女子大学 リメディアルとラーニングコモンズの協働による自主学修環境構築
東京未来大学 双方向型学習による動機づけの向上を目指した大学環境のデザイン
神奈川工科大学 新教育体系の学びを支援する図書館の設備整備
富山国際大学 主体的な学びを促進するインタラクティブ学習環境の構築
金城大学 福祉のリーダーを育成するためのアクティブラーニング環境の整備
金城大学短期大学部 アクティブ・ラーニング設備の整備による遊学精神の深化
岐阜女子大学 学士課程教育の質的転換を支える学修支援環境整備
名古屋商科大学 PBL・アクティブラーニングに対応した教室システムの整備
南山大学 協働学習空間の創造:2つのラーニング・エリアの新設
日本福祉大学 2つの学修PDCAサイクルの連動による主体的学習拠点の整備
愛知東邦大学 学生の主体的な学びを促す学修空間の整備
皇学館大学 主体的学修と多様な交流のための空間『百船(ももふね)』の整備
京都光華女子大学 アクティブラーニング促進と主体的な学びを支援する学習環境整備
大谷大学 教育力を高め、主体的な学修を実現する授業収録配信システム整備
同志社大学 ラーニング・コモンズにおける学生の主体的学びと学修の質保証
同志社女子大学 ICTを活用したアクティブ・ラーニング支援システムの導入
立命館大学 「ぴあら」内での学習における各国新聞データベースの比較活用
追手門学院大学 ラーニング・コモンズの整備と学生の主体的な学びの支援
関西大学 「考動力」を育む学習環境「コラボレーションコモンズ」の構築
相愛大学 相愛大学教育改革基地『ALPS』の整備
帝塚山学院大学 主体的学修ならびに組織的教育活動を可能にするICT環境の構築
羽衣国際大学 オンとオフによるアクティブラーニング型学修の全学的推進
関西学院大学 アクティブ・ラーニングを実践するための学びの空間整備事業
甲南大学 iCALLによる外国語教育のイノベーションと主体的学習の推進
関西国際大学 アクティブラーニングと体験型学修の往還のためのICT活用
帝塚山大学 アクティブな「個」と「共同」の学びを促進する学習空間の創造
奈良佐保短期大学 アクティブラーニングに繋げる双方向シアター型学習環境の創出
広島修道大学 地域社会と往還する能動的な学修空間の構築
福山大学 仲間が集い、主体的学びを育むアクティブ・キャンパスの形成
九州女子大学 学生目線による図書館施設の充実とアクティブ・ラーニングの展開
長崎外国語大学 学びの空間を多様化させることで可能となる自律学習と共同学習
九州ルーテル学院大学 キリスト教精神を基盤にした教育の特色化とアクティブ化の推進
日本文理大学 カリキュラム改革に基づく効果的アクティブラーニング教育の実現
志学館大学 学生の主体的学びを目指したeポートフォリオによる学修の可視化
名古屋学院大学 「i-Lounge」をコアとした国際人育成支援プログラム
名古屋外国語大学 インターナショナルキャンパス構築のためのアクティブラーニング
明治大学
国際大学
アクティブ・ラーニングの活用による国際協力人材の育成

 

いやー、ほんと多いです。すでに知っている取り組みもあれば知らない取り組みも。しかし皇学館大学の受賞報告、発表日に出してたんですね。こういう対応の速さ、見習いたいものです。

 

ラーニングコモンズは実際はただの部屋のようなものからしっかりサポート体制まで充実しているところまでピンからキリまであるのと、アクティブラーニングも実態評価がないとなんともというところ。今回の補助金での整備にしろそうでないにしろ、実際に見聞きしてみないといい取り組みかどうかも判断できないですね。ただ言えるのは、4月末に見てきた同志社大学のラーニングコモンズはすごかった。(おいおい見学記を書ければと・・)

 

今年度(H25)もこの予算は組まれており、しかも予算規模は昨年の31億から45億に増額されています。

 

文科省の資料の9ページに、ラーニングコモンズやアクティブラーニングに関係する補助項目の事例が次のように書かれています。

教学システムの改革(FDの実質化、IR機能の整備、ナンバリング等)、ポートフォリオによるきめ細かな支援、アクティブ・ラーニング、高大連携や初年次教 育による学力保証、ボランティア活動等の多様な学修、図書館の24時間・土日開館、優秀な学生への授業料減免、学内ワークスタディの拡充等

 

うーん、いろいろありますね。24時間開館はうちじゃさすがに無理だけど、自校では未実施のことが多く検討し放題です。(泣・笑?)

昨年と同じスケジュールであれば、今年も7月頃に募集が出るでしょうか。私学関係者は早めに検討し内部調整を進めておかねばですね。

 

ちなみに、昨年は「私立大学教育研究活性化設備整備事業」で、今年は「私立大学教育研究活性化設備整備事業」と名称に「等」が追加されているので、なんらかの対処範囲が広がっていると思われます。

 

[2013.05.16追記]

平成25年4月11日の学術情報委員会(第1回)において、アクティブラーニングを中心とした議論が行われており、議事録が公開されておりましたので、こちらもぜひご参考ください。本当に盛りだくさんで、現場で抱える問題点などもたくさん意見が出ています。教えていただいた文科省のSさんに感謝!

 

またこちらの資料の「基本施策8 学生の主体的な学びの確立に向けた大学教育の質的転換 」でもアクティブラーニングについて言及があります。