自動書庫を導入している図書館まとめ(2014)
以前、各自動書庫メーカーについてまとめを作成しましたが、自動書庫を導入する図書館は毎年じわりじわりと増えています。
ということで、現時点で私が把握している情報を元に、自動書庫を導入している図書館についてまとめてみました。あくまで把握できた情報のみを対象としています。なお情報源は、各メーカーサイトで出している情報と、国際基督教大学図書館の黒澤さんの「黒澤公人のドキュメンテーションシステムを考える-自動化書庫に関する情報(国内編)」のまとめ、あとは日々の情報収集によるところです。以上の点を踏まえた上でご参考ください。
100万冊以上の収蔵能力を持つ図書館
自動書庫を導入している図書館のうち、100万冊を超える収蔵能力を持つところについてピックアップしてみました。
図書館名 | 収蔵冊数(万冊) | メーカー |
国立国会図書館 関西館 | 140 | ダイフク |
福岡大学図書館 | 138 | 金剛 |
奈良県立図書情報館 | 100 | 日本ファイリング |
東京大学柏図書館 | 100 | 日本ファイリング |
獨協大学図書館 | 100 | 金剛 |
國學院大學図書館 | 100 | 金剛 |
立教大学池袋図書館 | 100 | 岡村 |
関西館は言わずもがなですが、大学だとトップの福岡大学以外は東大柏、獨協、國學院、立教と100万冊で横並び。そして公共図書館は、奈良県立図書情報館が一番多いようです。と、何気にアピール。
公共図書館
把握している図書館のうち、公共図書館についてまとめてみました。便宜上、国立国会図書館はこちらに含めております。関係者の皆さんご容赦ください。
図書館名 | 収蔵冊数(万冊) | メーカー |
国立国会図書館関西館 | 140 | ダイフク |
奈良県立図書情報館 | 100 | 日本ファイリング |
府中市立中央図書館 | 70 | 日本ファイリング |
いわき市立いわき総合図書館 | 65 | 日本ファイリング |
千葉市中央図書館 | 56 | 日本ファイリング |
長崎市立図書館 | 55 | 日本ファイリング |
岡崎市立中央図書館:Libla(りぶら) | 54 | 日本ファイリング |
さいたま市立中央図書館 | 50 | 日本ファイリング |
大分市民図書館 | 50 | 日本ファイリング |
新潟市立中央図書館 | 45 | 日本ファイリング |
岡山県立図書館 | 42 | 日本ファイリング |
京都府立図書館 | 40 | 日本ファイリング |
岩手県立図書館 | 40 | 日本ファイリング |
浜松市立城北図書館 | 40 | 日本ファイリング |
高崎市立中央図書館 | 40 | 金剛 |
川口市立中央図書館 | 30 | 日本ファイリング |
一宮市立中央図書館 | 30 | 日本ファイリング |
豊川市立図書館 | 30 | ダイフク |
川崎市立中原図書館 | 27 | 日本ファイリング |
伊丹市立図書館「ことば蔵」 | 25 | 岡村製作所 |
あきる野市中央図書館 | 24 | 日本ファイリング |
墨田区立ひきふね図書館 | 24 | 岡村製作所 |
稲沢市立中央図書館 | 23 | 日本ファイリング |
下関市立中央図書館 | 22 | 日本ファイリング |
西条市立西条図書館 | 21 | 日本ファイリング |
福知山市 新図書館中央館 | 20 | 日本ファイリング |
稲城市立中央図書館 | 19 | 金剛 |
桑名市立中央図書館 | 16 | 日本ファイリング |
高岡市立中央図書館 | 15 | 日本ファイリング |
金沢海みらい図書館 | 14 | 日本ファイリング |
西原町立図書館 | 14 | 日本ファイリング |
ゆうき図書館 | 12 | 日本ファイリング |
京都市右京中央図書館 | 10 | 日本ファイリング |
奈良市立北部図書館 | 2 | 日本ファイリング |
公共系はとにかく日本ファイリングのシェアが圧倒的ですね。
大学図書館
同様に把握している図書館のうち、大学図書館についてまとめてみました。
図書館名 | 収蔵冊数(万冊) | メーカー |
福岡大学図書館 | 138 | 金剛 |
東京大学柏図書館 | 100 | 日本ファイリング |
立教大学池袋図書館 | 100 | 岡村製作所 |
獨協大学図書館 | 100 | 金剛 |
國學院大學図書館 | 100 | 金剛 |
広島大学中央図書館 | 87 | 日本ファイリング |
青山学院大学万代記念図書館 |
85 | 日本ファイリング |
中京大学名古屋図書館 | 80 | 日本ファイリング |
京都産業大学中央図書館 | 80 | 日本ファイリング |
九州大学附属図書館伊都図書館 | 80 | 金剛 |
成蹊大学図書館 | 72 | 金剛 |
北海道大学附属図書館本館 | 52 | 日本ファイリング |
国際基督教大学図書館 |
50 | 日本ファイリング |
新潟大学附属図書館中央図書館 | 50 | 日本ファイリング |
早稲田大学中央図書館 | 50 | 金剛 |
金沢大学附属図書館 自然科学系図書館 | 47 | 金剛 |
東京経済大学図書館 | 45 | 岡村製作所 |
大阪経済大学図書館 | 44 | 金剛 |
明星大学図書館(日野) | 40 | 日本ファイリング |
日本体育大学図書館 | 40 | 日本ファイリング |
東京農業大学 世田谷学術情報センター |
40 | 金剛 |
龍谷大学瀬田図書館 | 38 | 日本ファイリング |
聖徳大学川並記念図書館 | 37 | 日本ファイリング |
立命館大学 BKCメディアセンター | 35 | 日本ファイリング |
奈良女子大学附属図書館 | 25 | 金剛 |
東京医科歯科大学図書館本館 | 22 | 岡村製作所 |
大東文化大学 板橋図書館 | 20 | 日本ファイリング |
立教大学新座図書館 | 20 | 金剛 |
聖マリアンナ医科大学 医学情報センター |
20 | 金剛 |
北海道情報大学図書館 | 10 | 岡村製作所 |
九州大学附属図書館筑紫分館 | 6 | 日本ファイリング |
大学になるとだいぶ金剛のシェアが増えてきます。岡村製作所も立教大学池袋図書館に続き、東京経済大学も納品しており、今後導入校が増えていくでしょうか?なお東京経済大学、東京農業大学、広島大学、奈良女子大学は2014年からの導入校となります。
全体
メーカー | 公共 | 大学 | 総計 |
日本ファイリング | 28(82%) | 15(48%) | 43(66%) |
金剛 | 2(6%) | 12(39%) | 14(22%) |
岡村製作所 | 2(6%) | 4(13%) | 6(9%) |
ダイフク | 2(6%) | (0%) | 2(3%) |
合計 | 34館 | 31館 | 65館 |
今のところ、公共と大学の導入館はそれぞれ約30館ぐらいで、ちょうど半々ぐらいなんですね。正直、自動書庫は導入コストだけでなく管理コストもかかるため、図書館の運営方針をしっかり定めておかないと後々後悔することにもなりかねません。
直接、本を手に取り、ブラウジングできることを重視するのであれば、明治大学和泉図書館のようにコンセプトから外し自動書庫を検討しない選択もありだと思います。
個人的には国立国会図書館はじめ、県立図書館や大きな図書館のうち保存館として位置づけられる図書館は導入を検討する価値はあるかと思います。参考になるかどうかわかりませんが、自動書庫導入の参考情報として以下もご覧ください。
今後のゆくえ
今後注目の自動書庫としては、東京大学と九州大学の新図書館構想でしょうか。東京大学は2019年に300万冊の自動書庫を設けることを発表しています。まだ具体的な業者選定は聞いてませんが、果たしてどこのメーカーになるでしょうか。
九州大学も現在キャンパス移転計画が進んでおり、すでに伊都図書館(理系)で80万冊の自動書庫が設けられ運用されています。また、今後は350 万冊の収蔵能力を持つ中央図書館(文系)の建設が予定されており、2017年~2019年には移転が完了する予定です。ただし、まだこちらは自動書庫を導入するかどうか明確になっていません。とはいえ、移転までの時間を考えると、そろそろ計画がまとまってくる頃合いではないでしょうか。
なお自動書庫に関しては、「学修環境充実のための学術情報基盤について(審議まとめ)(2013)」においても、アクティブラーニングスペースのための空間確保のための手段としても挙げられています。
大学の状況に応じて、以下に示す方法などを参考に、学術資料のより効果的・効率 的な保存方法の導入を検討し、図書館における空間の有効活用を推進することが考え られる。
① 紙媒体資料について、電子的保存・流通への対応と合わせて、各資料を紙媒体で 維持・提供する必要性についての検討を行 う。
② 蔵書を集約化する自動書庫の導入や大学単独もしくは共同で遠隔地に保存書庫の 設置について検討する。
③ 大学内においては中央図書館と部局図書館、大学外に関しては国立国会図書館を 含めた複数の大学図書館の間で、紙媒体の重複保存を抑制するシェアード・プリン トの導入について検討する。
ちょうど2月末にシェアード・プリン トに関するフォーラムがありましたが、従来の単館の収蔵庫としての自動書庫から、こういった共同保存のために自動書庫を活用するケースも出てくるかもしれません。大学が近隣にあれば、書庫自体を共同利用という可能性もあるでしょうか。
個人的には図書館の資料だけでなく、大学文書などの保存庫として、図書館以外の部門の必要な収蔵庫としても使えるのではないかと思っています。いずれによせ、図書館としてはブラウジングができなくなるわけですので、使用目的と長期的な計画を見据え、導入を検討する必要があります。
おそらく今の技術でも、表紙や背表紙を使ってデジタルブラウズすることはできると思いますが、出版物のデジタル化が進めば30年後位には自動書庫にありながら中身をブラウズする仕組みとか出てくるかな?などと考えてみたり。未来はどうなるでしょうか?
国際基督教大学図書館の自動書庫。