図書館と建築を考える (5)建築賞応募数の変遷

図書館建築賞関係の記事が続いてますが、とりあえず最後の予定。

実は建築賞、ここのところ応募総数が減っています。理由はなんなんでしょうね?建築賞を受賞すれば、全国図書館大会で授賞式はあるし、図書館雑誌、図書館年鑑にも掲載され、最近はカレントアウェアネスでも速報がでますし、宣伝材料として十分だと思います。トサケン的にいえば、建築賞受賞館というブランディングを得るチャンスだとは思うのですが。(建築賞が業界人以外にどこまで効果があるかはわかりませんが)

強いて負担があるとすれば、応募書類の作成と2次審査料5万円の負担ぐらい?逆にいえば、書類作成の手間と5万円のみで建築賞を狙えるチャンスがあるわけで、とりあえず申請してみる価値はあるのではないでしょうか。(でもきっと本当に一番大変なのは、申請するということを内部調整するところでしょうけど)

 

実際の応募状況は次の通りです。

受賞年 受賞数 応募
総数
内訳 採択率
公共 大学
第1回(1985年) 8 41 30(5) 10(3) 1 20%
第2回(1986年) 5 32 27(3) 4(1) 1(1) 16%
第3回(1987年) 3 16 15(3) 1 0 19%
第4回(1988年) 4 17 14(3) 3(1) 0 24%
第5回(1989年) 7 11 8(5) 3(2) 0 64%
第6回(1990年) 1 13 11(1) 2 0 8%
第7回(1991年) 7 14 11(6) 3(1) 0 50%
第8回(1992年) 2 16 14(2) 2 0 13%
第9回(1993年) 3 17 14(3) 2 1 18%
第10回(1994年) 3 17 15(2) 2(1) 0 18%
第11回(1995年) 3 17 15(2) 2(1) 0 18%
第12回(1996年) 2 12 11(2) 1 0 17%
第13回(1997年) 3 10 8(3) 1 1 30%
第14回(1998年) 2 12 10(2) 2 0 17%
第15回(1999年) 3 15 11(1) 3(1) 1(1) 20%
第16回(2000年) 3 17 15(3) 1 1 18%
第17回(2001年) 2 13 12(2) 1 0 15%
第18回(2002年) 3 9 7(2) 2(1) 0 33%
第19回(2003年) 2 9 7(2) 2 0 22%
第20回(2004年) 2 7 4 2(1) 1(1) 29%
第21回(2005年) 1 7 7(1) 0 0 14%
第22回(2006年) 1 10 6(1) 1 3 10%
第23回(2007年) 1 7 5(1) 1 1 14%
第24回(2008年) 2 8 5(1) 3(1) 0 25%
第25回(2009年) 2 8 5(1) 3(1) 0 25%
第26回(2010年) 1 5 3(1) 2 0 20%
第27回(2011年) 1 3 3(1) 0 0 33%
第28回(2012年) 1 5 5(1) 0 0 20%
第29回(2013年) 2 6 5(2) 1 0 33%
総数 80 374 303 60 11 21%

 ※基礎データは「日本図書館協会建築賞作品集―図書館空間の創造」を参照。

※( )内は受賞数

 

最近応募数も減っており、受賞館もここのところ1館という状況が続いています。正直、絶対評価、相対評価がどの程度影響して受賞館が決まっているのかよくわかりませんが、応募総数が少なければ限定された中からの選考となってしまい、グッドプラクティスを知る機会も減るような気がします。

大学も公共も築30年、40年を迎え建て替えるところも増えているので、こういった賞を活用するのもありではないでしょうか。一応、応募式ですが推薦も受け付けていますので、周囲の推薦も大事かも。

 

あと応募が減った原因として少し頭をよぎったのは、申請に関わる内部調整部分を含めた政策・運営に関わる現場のパンパワー不足、専任職員の減少も原因の1つではないかということ。

ということで、特に応募総数が減少した2002年以降の数字を追ってみた。公共図書館は「社会教育調査」、大学図書館は「日本の図書館」をまとめてくださっているブログ「ぺえぺえ魂」さんの数字と「学術情報基盤実態調査」を参照しました。「日本の図書館」と「学術情報基盤実態調査」では微妙に集計方法が異なるため数字は一致していないが、傾向は同じなので特に細かいところは気にしないでおきます。

 

◆【公共】設置者別指定管理者(管理受託者を含む)別図書館数*1

  全国 うち指定管理者
平成14年度(2002) 2,742 項目なし
平成17年度(2005) 2,979 54
平成20年度(2008) 3,165 203
平成23年度(2011) 3,274 347

 

◆【公共】図書館の職員数(全国)*2

  専任 兼任 非常勤 指定管理者
平成14年度(2002) 16,290 1,682 9,304 項目なし
平成17年度(2005) 15,282 1,851 13,527 項目なし
平成20年度(2008) 14,259 2,169 16,129 項目なし
平成23年度(2011) 12,479 2,180 17,743 3,867

 

◆【大学】『日本の図書館』にみる大学図書館員―数の推移*3

  専従 兼務 非常勤 臨時 派遣等
H14(2002) 7,171 1,111 2,105 2,683  
H17(2005) 6,379 1,179 2,157 2,244  
H20(2008) 5,509 1,220 2,328 1,987 2,688
H23(2011) 5,007 1,209 2,673 1,806 2,792

 

◆【大学】総括事項/図書館・室の職員/外部委託業務*4

  専任 臨時 館数 全面委託 一部委託
H14(2002) 7,577 5,898 1,290 項目なし 619
H17(2005) 6,799 6,971 1,361 9 562
H20(2008) 6,078 6,557 1,421 45 1,023
H23(2011) 5,630 6,373 1,474 68 1,103

 

既知のことで、あらためていうまでもありませんが、公共も大学も図書館数の増加と反比例して専任職員数は減っていますね。そして公共では指定管理者が増えていますし、大学も部分委託だけでなく、全面委託も増えています。やっぱりこういった背景も多少なり応募減へ影響しているのかも?

 

また、図書館建築賞については、施主側が応募するパターン、設計事務所側が応募するパターンとがありまして、第2回 (1986年) から第25回 (2009年)までは図書館雑誌の毎8月号に応募者の情報も載っています。この応募者の掲載があった期間の受賞館(該当期間中67館)のうち、施主側である市や大学が申請しているのは33館と約半数でした。

賞を取れば設計事務所にとっては宣伝材料になるでしょうし、自治体や大学にとっても評価を上げるという意味では同様な気がします。最近は図書館の新規オープンと同時に指定管理者を導入するところも増えていますが、入札時の仕様にこういった賞への応募を組み込んだり、逆に応募側から提案というもあるのだろうか?いづれにせよ、こういった賞を活用しない手はないかなと思います。

今回は図書館建築賞を取り上げましたが、施設関係の賞は他にもたくさんあるので、今後、それらについても取り上げてみたいと思います。

 

【関連する過去記事】

 

【追記情報】

2013.08.25 第29回(2013)分を追記