大学図書館とスマートフォン
最近、すっかり周囲はスマートフォン所持者ばかり。特に図書館業界のスマホ率は相当高いような気がします。というところから、「図書館等のスマホ対応はどうなっているのだろう?」と、少し疑問に思い調べてみました。ただ、調べていくといろんな疑問点が出てきて収集がつかなくなったので、今回は蔵書検索に的を絞ってみました。
業界情報ということで、まずはやはりカレントアウェアネス・ポータル(http://current.ndl.go.jp/ 以下カレント)で情報収集してみました。以下は海外の動向。(過去の記事なので、本文中のリンク切れが一部あります)
- WorldCat、iPhoneに対応(2008年9月18日)
- Google Book Search、携帯電話向けOS“Android”対応アプリケーションを開発(2008年11月11日)
- 米国でも携帯電話・携帯機器向けOPACが広がりの兆し(2009年2月10日)
- 「モバイル機器と図書館」をテーマにしたオンラインシンポジウム
(2010年4月20日) - スマートフォンでのインターネット利用の増加が図書館に意味すること(記事紹介)(2011年8月22日)
- オーストラリア国立図書館、iPhone/iPad向けの資料検索アプリをリリース(2011年8月16日)
- マサチューセッツ工科大学(MIT)図書館、スマートフォン向けの図書館サイトを公開(2011年8月23日)
- アムステルダム大学図書館、FacebookやiGoogle等で資料検索ができるアプリ等を公開(2011年11月25日)
- 英JISC Observatory、モバイルウェブの現状を概観する報告書“Delivering Web to Mobile”を公表(2012年5月15日)
- オーストラリア国立図書館が資料検索用のiOS・Androidアプリをリリース、新モバイル戦略の一環で(2012年5月28日)
アメリカでのiPhone(wikipedia)の発売が2007年6月29日、3Gが2008年7月11日に日米で販売開始されているので、iphoneが普及するにつれ、まずWorldCat、Googleあたりが先進的に開発をはじめ、2009~2010の間にアメリカでスマホ対応が進み、2011年にはインフラとしてスマホ対応の必要性が求められ、そして各国へ・・という状況でしょうか。
国内の状況
では日本ではどういったところがスマホ対応しているのか、以下、自分で把握しているところです。できるだけ導入の時系列順に。
- 国立国会図書館サーチ(モバイル):http://iss.ndl.go.jp/sp/
- 佛教大学図書館ポータルサイト スマートフォン版:http://bulib.bukkyo-u.ac.jp/docs/portal/?mobile=top
- 東京大学OPAC mobile beta:https://mbc.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/UTOPACmobile/index.html
- カーリル:http://calil.jp/
- 九州大学附属図書館:http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/
- 東京海洋大学附属図書館 OPAC(スマートフォン版):http://lib.s.kaiyodai.ac.jp/smartphone/cgi-bin/opac_search.cgi
- お知らせ(東京海洋大学附属図書館)
- サイト内検索でスマートフォンで検索。2012/06/11から?
- 静岡県内図書館等の横断検索「おうだんくんサーチ」:http://mets.elib.gprime.jp/oudankun-search_pref_shizuoka/basic_table.php
- 山口大学図書館 スマホ版 :http://www.lib.yamaguchi-u.ac.jp/sp/
- 7月より開始とのこと。
- 山口大学図書館HP
- 現在工事中でうまくつながらない場合あり。
- 福岡大学図書館 携帯版、スマートフォン版:http://www.lib.fukuoka-u.ac.jp/sp/
- 京都大学蔵書検索ケータイKULINE:https://m.kulib.kyoto-u.ac.jp/webopac/mobtopmnu.do
- KULINEサービスのシステム更新に伴う重要なお知らせ(2012年8月19日 京都大学図書館機構)
- 京都大学蔵書検索サイト(KULINE)の新機能をお知らせします(2012年8月21日 京都大学図書館機構)
- 京都大学ケータイKULINE(クライン) (2011年12月22日 京都大学図書館機構) →ケータイではなくスマホサイトへ転送される
- Library Service News(2012年8-9月合併号< 京都大学図書館機構)
- 図書館機構が京都大学蔵書検索サイト(KULINE)を一新 (2012年8月20日 京都大学)
- 京都大学様が図書館システムを刷新し、本格的な次世代OPACを構築(2012年8月20日 富士通株式会社)
- KULINEリニューアル(2012年8月26日 京都大学EXPRESS)
- 学内研修イベント情報 2012年9月07日・2012年9月13日 平成24年度 図書館業務システム研修(KULINE)(京都大学図書系職員研修ページ)
- 富士通が京大の図書館システムを刷新 - 次世代OPAC機能を構築(2012年8月21日 マイナビ・Yahoo!ニュース )
- 京大図書館がシステムを刷新、次世代OPACを構築……富士通 iLiswave-Jを活用(2012年8月20日 RBB TODAY・Yahoo!ニュース )
- 京大が図書館システムを刷新、電子書籍や他大学の文献も一括検索可能に(2012年8月20日 ITmedia・Yahoo!ニュース )
- togetter:京大蔵書検索システムKULINEのリニューアル反応
うーん、こうやって並べてみると思ったより少ない?でも携帯サイト(モバイルサイト)を運用しているところは多いので、ある意味、スマホ対応と言えなくはない気もします。とはいえ、今後はやはり増えていくでしょうね。あとはデザインがみんな似ているのが気になるところ。何か共通のサービスを使ってたりするのかな?同じ業者?オープンソース?
それにしても京大は方々でニュースが出ていて、あらためて注目度の高さを実感しました。逆にリリース等の情報が上手く発掘できなかった図書館もあり、自分の検索力の弱さを棚に上げつつも、まだ運用例が少ないだけにもっとPRすればいいのに、なんて思ってしまいました。あと自戒を込めて、サービス展開した際はしっかり日付入りでニュースリリースせねばと・・。
あと気になったのは、九大の採用している、「レスポンシブWebデザイン」。スマートフォンやPCなど、アクセスしたデバイスにあわせて自動的に最適化されたデザインが表示される仕組みとのこと。カーリルや静岡県の横断検索も同じ仕組み??
利用者はPC版と同じURLを意識せずにアクセスできるので便利そうです。今後このような仕組みが増えていくのでしょうか?林さんもこう仰ってます。
「OPACにレスポンシブWebデザイン」とか仕様書に書いてみた。
— Takanori HAYASHIさん (@tzhaya) 6月 15, 2012
まぁ自分自身はウィルコムのちょっと微妙なスマホを使っていて、こういうサイトを使えず、勤務先では携帯版すらサービス提供ができていないので、他のところはどういう計画とかあるのか気になるところ。実際、スマホサイトや携帯サイトのアクセス数とかどうなんでしょう?どこか統計など使ってレポートを出してるところないかな?(内部資料としては持っているのでしょうけど)
大学生のスマホ利用状況
少なくともスマホの利用者は年々増えており、大学生に関していえば今後ますます増えていくでしょう。職員や教員も学生との情報格差が広がらないよう、何とか食らいついていきたいところです。最近はあまりニュースにならなくなりましたが、1~2年前は学生へiPhoneやiPadの配布などが注目されました。
- 青学大、授業などへの活用のため社会情報学部の学生全員に「iPhone 3G」を配布(2009年5月15日 カレント)
- 共愛学園前橋国際大学、全学生と教職員にiPod touch配布――iPadも順次導入(2010年4月2日 ITmedia)
- 新入生にiPad配布へ 名古屋文理大情報メディア学科(2010年5月17日 ITmedia)
- 創価女子短期大学が新入生全員にiPadを配布(2011年8月19日 マイナビ)
- 横浜商科大学 全学生・教職員にiPhoneを無償貸与(2011年1月17日 ITpro)
大学生の実際の利用状況に近いアンケート等には以下のようなものがあります。(アンケート母数が少ないものもありますので、その点ご注意ください)
- 女性、大学生のユーザー比率が上昇――すそ野広がる2011年のスマホ市場(2011年12月21日 ITmedia)
- 就活生、スマホ所有率は59.3%(2012年1月25日 J-CAST)
- 近畿大学、「大学生の携帯情報端末の利用に関する調査」結果を公表(2012年1月30日 カレント)
- 就活女子の7割がスマホを所有(2012年3月30日 日経ウーマンオンライン)
- ネットの利用端末、10代の7割がケータイ&20代の6割がスマホ(2012年5月15日 リセマム)
- 就活生のスマートフォン利用実態調査(2012年7月10日 JNEWS.com)
- イマドキの就活生、8割以上がスマホユーザー(2012年7月10日 Yahoo!ニュース)
特に就職活動する学生の所持率は高いですね。しかも女性の所有率が高い傾向にあります。普段、大学でも女性の方が就職活動の準備やイベント参加が多く熱心なので、スマホの活用についても積極的なのかなという印象。
高校生のスマホ利用状況
高校生のスマホ所持率もかなり増加しています。高校生はまだ伸び代があるので、来年にはさらに所有率が伸びそうです。またSNS利用率も増えているので、大学にとってはTwitterやfacebookを使った広報活動も今後重要になってきそうです。
- 高校生におけるスマホ普及率は15%、SNS利用率は6割~リクルート調査 (2011年8月24日 INTERNET Watch)
- 高校生のスマートフォン所有率は4割弱で前年比2.6倍増…高校生価値意識調査2012(2012年7月3日 リセマム)
- リクルート進学総研:高校生のWEB利用状況の実態把握調査
- なんと、女子中高生の6割がiPhoneへ乗換中! Androidは苦戦中...(2012年5月21日 ギズモード・ジャパン)
スマホのシェアと今後の予測
しかし若者のiPhone人気はすごいですね。ただ、販売的にはAndroidが優勢のようです。
- 「iPhone 4S」が「日本で一番売れたスマートフォン」に、発売から約8か月で(2012年7月6日 BCNランキング)
- 夏商戦前で出荷台数が減少――JEITA 5月携帯出荷台数(2012年07月10日 ITmedia)
- 2012年7月の携帯電話ランキング、夏モデルは「GALAXY S III」が一歩リード(2012年8月9日 BCNランキング)
いづれにせよ、販売や出荷台数は、スマートフォンは右肩あがりのカーブを描いており、あと数年は右肩上がりが続きそうです。
とりあえず長くなってしまいましたが、スマホについてはいろいろと考えさせられます。サービス提供する側としては、スマホ対応、またスマホを通してユーザーが使っているサービスなども視野に入れておく必要があるなと。自身もスマホ難民に近いところがあるので、今後どうしたものか・・。