第29回(2013)日本図書館協会建築賞の結果について
図書館雑誌8月号で今年の日本図書館協会建築賞が発表されました。受賞館は以下の2館でした。
以下、いつも通り、情報をまとめてみました。
金沢海みらい図書館
公式HP:http://www.lib.kanazawa.ishikawa.jp/umimirai/index.html
延床面積:5,439㎡
蔵書収容力:40万冊
開館年:2011年5月21日
自動書庫:14万冊(日本ファイリング製)
【受賞歴】
- 第34回(平成23年度)金沢都市美文化賞受賞(金沢都市美文化賞)
- 第33回石川建築賞 優秀賞(石川県建築士会)(PDF)
- 世界で最も美しい公共図書館ベスト25(FlavorPill)
- INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARDS 2012(国際建築賞)(The Chicago Athenaeum)
- 2012年度グッドデザイン賞(日本デザイン振興会)
- 第44回中部建築賞 一般部門入賞(東海建築文化センター)
- 2012年度 日本建築家協会賞(日本建築家協会)
- 第11回環境・設備デザイン賞 第Ⅱ部門:建築・設備統合デザイン部門 最優秀賞(建築設備綜合協会)
- 第23回(2012年)JSCA賞新人賞 田尾玄秀-金沢海みらい図書館(日本建築構造技術者協会)
- 第54回BCS賞(日本建設業連合会)
【設計・計画等】
- 金沢西部図書館(仮称)整備基本計画骨子案(金沢市)(PDF)
- 金沢西部図書館( 仮 称 )整備基本計画骨子案パブリックコメントでの意見・要望と市の考え方(対 応)について(金沢市)(PDF)
- 金沢西部図書館(仮称)設計プロポーザルの実施について(金沢市広報 号外第15号 平成20年(2008年)5月2日)(PDF)
【関係業者】
- 納入事例-金沢海みらい図書館様 (日本ファイリング株式会社)
- 金沢市図書館様 複数・大規模館の特色ある運営の一元管理と新設館へのICタグ導入を実現(富士通株式会社)(PDF)
- Zoom UP -現場金沢海みらい図書館建設工事(戸田建設)
- 事例紹介 | 金沢海みらい図書館(コトブキシーティング株式会社)
- 金沢海みらい図書館(株式会社山二製作所)
【ニュース】
- 金沢西部図書館の設計をシーラカンスK&Hに委託、市がプロポーザルで選定(2008/08/04 nikkei BP net)
- 広々、郷土学ぶ新拠点 金沢海みらい図書館 (2011/05/12 北國・富山新聞)
- 金沢海みらい図書館、開館 地域の新たな学習、交流の場に(2011/05/21 北國・富山新聞)
- 金沢西部の海側幹線沿いに「金沢海みらい図書館」開館(2011/05/30 金沢経済新聞)
- 海みらい図書館や香林坊ラモーダ 金沢都市美文化賞(2012/02/11 北國・富山新聞)
- 世界の美しい公共図書館25館(記事紹介)(2012/04/18 カレントアウェアネス・ポータル)
- 「世界で最も美しい図書館」ベスト25に選出 金沢海みらい図書館(2012/05/04 北國新聞)
- 金沢海みらい図書館、CMで注目 中田英寿さん出演、話題に(2012/06/21 北國新聞)
- 注目、撮影希望が殺到 金沢海みらい図書館 (2012/08/21 北國・富山新聞)
- 海みらい図書館100万人1年4カ月スピード達成(2012/09/24 47NEWS)
- 2012年度グッドデザイン賞に千葉大学アカデミック・リンクや金沢海みらい図書館等が選ばれる(2012/10/03 カレントアウェアネス・ポータル)
- アートの力で利用者のマナーアップへ-金沢海みらい図書館、新「作戦」(2012/11/01 金沢経済新聞)
- Instagramに投稿された世界で最も美しい図書館(2013/04/18 カレントアウェアネス・ポータル)
- 第54回BCS賞に金沢海みらい図書館、東京工業大学附属図書館等が選ばれる(2013/07/19 カレントアウェアネス・ポータル)
- 金沢海みらい図書館など17件にBCS賞、日建連(2013/07/20 日本経済新聞)
- 金沢海みらい図書館(japan-architects Review)
【雑誌記事】
- 金沢海みらい図書館(金沢市) 6000個の円窓で四周を囲む--光を透過するパンチングウオールが水平力も負担,日経アーキテクチュア,(954),32-39,2011-06.
- 金沢海みらい図書館--堀場弘+工藤和美/シーラカンスK&H,新建築, 86(8),89-100,182,2011-07.
- 金沢海みらい図書館--設計・監理/堀場弘+工藤和美/シーラカンスK&H 施工/戸田・兼六・高田特定建設工事共同企業体,近代建築,65(8),91-95,2011-08.
- architectural design 金沢海みらい図書館--シーラカンスK&H,建築技術,(740),20-47,2011-09.
- 金沢海みらい図書館,KJ,2011-10.
- 金沢海みらい図書館,JA,84,2011.12.
- スチールデザ イ ン,No.19,2012-03 .(PDF)
- 金沢海みらい図書館,GA JAPAN,111,2012-03.
【動画】
動画で紹介されているものがあり、動画だとやはり全体像がわかりやすいです。以下、埋め込みの2件はおススメです。
新建築2011年7月号「金沢海みらい図書館」シーラカンスK&H
金沢ウラガワ探検隊(金沢海みらい図書館編)
※Umimirai Library(YouTube)はありなのかな??
【感想】
様々な情報や映像などを見て、とりあえず吹き抜けの高さによる解放感がすごいと思いました。また外観も目立ち、丸窓も印象的です。個人的には小布施や武蔵野プレイス、ゆうき図書館などとデザインや雰囲気が近く、通じるものがあるような気がしました。
整備方針としては、「地域に根ざした図書館」、「新しいランドマークとなる図書館」、「地域の新しい情報拠点としての図書館」の3点を策定されたらしいのですが、来館者数も1年4か月で100万人、2年間で延べ5万人が交流ホールを利用した実績があるということ、また多くの賞を受賞していることからも、かなり目標が達成されているのではないでしょうか。
特に多数のメディアで取り上げられ、今回情報源として挙げませんでしたが海外の雑誌などでも取り上げられているようで、設計会社のPRがうまいのかな?設計会社のHPでも掲載情報がまとめられていてわかりやすかったです。
一方、図書館や市のHPでは受賞情報等のまとめなどが載ってなく、ちょっともったいない気がしました。建築関係の雑誌などにも多く取り上げられ、様々な賞を受賞しているので見学者も多いらしく、撮影者も増えているようなので、画像公開など情報発信と記録を充実させると見学者も受入側も負担が減りますし、また後世への記録という面でも期待したいところです。
あと個人的には、北前船関連資料のある「日本海情報コーナー」が気になりました。関連して、以前、鳥取県立図書館を訪問した際、「環日本海交流室*5」で中国・韓国・ロシア関係の資料を興味深く拝見したのを思い出しました。福岡はじめ九州だとアジア関係の資料コーナーが多いのですが、日本海側はまた独自の文化・郷土資料が多そう。いつかぜひ訪問してみたいところです
南相馬市立中央図書館・市民情報交流センター
公式HP:http://www.city.minamisoma.lg.jp/index.cfm/23,html
延床面積:5,397㎡
蔵書収容力:57万冊
開館年:2009年12月12日
【受賞歴】
【設計・計画等】
- 建設産業・不動産業:CM方式のモデルプロジェクト - 平成21年度のモデルプロジェクト(国土交通省)
- 新図書館建設事業(南相馬市)(PDF)
- 特集 重点事業(原町区事業)南相馬市新図書館建設事業(広報みなみそうま「お知らせ版」 3月号)(PDF)
- 新図書館整備事業見直し検討表(南相馬市)(PDF)
【関係業者】
- 作品集-南相馬市図書館(株式会社寺田大塚小林計画同人)←様々な資料の添付あり
- スライド(竣工写真)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
- スライド(計画同人撮影)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
- スライド(開館日)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
- 復興を支える図書館 (11.06/29)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
- 復興を支える図書館 (11.08~12.05)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
- 復興を支える図書館 コンサート(11.09/08)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
- 復興を支える図書館(12.05/19)(株式会社寺田大塚小林計画同人)
※スライドショーになっており、画像が再生されます。
【ニュース】
- 南相馬市発注図書館工事 民間積算方式、入札ゼロ(2007/06/05 47NEWS)
- おいしくない?再び入札ゼロ 南相馬市図書館工事(2007/11/27 47NEWS)
- 新図書館建設スタート 南相馬市22年春開館目指す(2008/04/27 47NEWS)
- 南相馬市立図書館引き渡し 今秋図書搬入 12月開館(2009/08/13 47NEWS)
- 南相馬市立中央図書館オープン<12月15日(火)>(2009/12/15 原町観光協会)
- 南相馬中央図書館の入館者が50万人達成(2010/12/12 47NEWS)
- 福島県の南相馬市立中央図書館、8月9日から業務を一部再開(2011/08/05 カレントアウェアネス・ポータル)
- 2011年8月9日 5か月ぶりに再開!中央図書館 ~お気に入りの本を探す~ (南相馬市)
- 5カ月ぶり再開 南相馬市立中央図書館と博物館(2011/08/10 47NEWS)
- 震災後の南相馬市立中央図書館の様子(2011/09/12 ウェブレント)
- 宮城・福島の旅(2)(2011/10/06 エル・ライブラリー 大阪産業労働資料館)
- 震災日記(68)震災に負けなかった図書館(2012/05/21 Mさんへの手紙)
- シャンティ国際ボランティア会、9月に福島県南相馬市と宮城県山元町で移動図書館プロジェクトを開始(2012/07/30 カレントアウェアネス・ポータル)
【雑誌記事】
- 記者レポート 新図書館建設にCM方式導入も応札者集まらず "三度目の正直"となるか、参加資格設定に苦悩する南相馬市,東北ジャ-ナル,25(8),109-111,2007-08.
- 西澤秀喜.CM(コンストラクション・マネジメント)方式の活用事例,職業能力開発総合大学校東京校紀要,第25号,2010-03.(PDF)
- 南相馬市立中央図書館・南相馬市民情報交流センター,SCENE65, 9-12,2010-04.(PDF)
【動画】
※個人撮影かと思いますが、貴重な映像記録だと思います。
【感想】
ホームページのTOP画像を見た瞬間、館内がどこかに似てるなぁと思ったら、設計会社は伊万里市民図書館なども手掛けているようで、言われてみればとどことなく雰囲気が似ていると思った次第。
こちらは建築段階で入札でいろいろ苦労されていたようで、「CM(コンストラクション・マネジメント)方式」というやり方を導入されていたのですね。正直、これまで知りませんでした。(CM方式の詳細は国土高中小の「CM方式活用ガイドラインについて*7」を参照されてください)
【CM方式とは】
「建設生産・管理システム」の一つであり、発注者の補助者・代行者であるCMR(コンストラクション・マネージャー)が、技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計の検討や工事発注方式の検討、工程管理、コスト管理などの各種マネジメント業務の全部又は一部を行うもの。
我が国では、従来は、一括発注方式が多用されており、施工に関するマネジメント業務は主に元請業者(総合工事業者)が担ってきた。
(CM方式活用ガイドラインについてより一部抜粋)
また南相馬市というと、どうしても震災の影響が心配されるが、図書館自体は地震による損傷はなく、図書もほとんど落下しなかったとのこと。(saveMLAKの施設情報も参照)
ただし、南相馬市自体は地震、津波、原発事故による被害が大きく、一部地域が避難指示区域となっており、図書館の再開まで5か月かかっており、我々の想像がつかない相当のご苦労があったと思います。今回の建築賞の受賞をきっかけに、今後の図書館活動がより盛り上がることを祈るばかりです。
なお今回ちょっと気になったのは、受賞館が「南相馬市立中央図書館」ではなく「南相馬市立中央図書館・市民情報交流センター」と、複合施設となっている点です。これってあくまで名称のみなのか、込みでの評価なのだろうか?
双方のホームページを見ると、複合施設な感じがあまり伝わってこないので、できればもっと情報を共有し、施設等の情報も掲載し充実させていく必要があるように思いました。
その他の応募状況
今年は応募が公共図書館が5館、大学図書館が1館の計6館と、ここ数年の申し込み状況と変わりなく(少なく)、大学図書館は3年連続で受賞なしとなっています。
選考経過で、最終選考に残ったのは3館とあり、受賞を逃したもう1館は「秋田県南部の日本海に面する」、「複合施設」とあり、おそらく由利本荘市図書館?複合施設は由利本荘市文化交流館カダーレ?
大学図書館は増築部分が対象、学生の自主的な学習の場を増築など、少しヒントとなる情報がありましたが、図書館年鑑2012の新しくできた図書館の頁も参照してみたのですが、どこなのかちょっとあたりがつけられませんでした。
明治大学和泉図書館や武蔵野プレイスなど今回は申請がなかったようですが、今年の南相馬市中央図書館など2009年開館の施設も申請・受賞していますので、ここ数年に新しくできた図書館も応募年をいつにするか、競合との兼ね合いも気になるところです。またここ数年、図書館が多数オープンしてますので、また来年を楽しみにしたいと思います。
いづれにせよ、受賞館の表彰は、全国図書館大会で行われるはずなので、今年の11月に福岡でということになりますね。今年の図書館大会は興味ある分科会もあるのと、地元福岡での開催となるので、ぜひ参加したいところです。
【関連する過去記事】